NPO法人 山口県東部泌尿器科研究会
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精巣と陰嚢の病気
精巣腫瘍 精巣・陰嚢内感染症 睾丸回転症 陰嚢水腫 停留精巣
●精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣腫瘍とは、男性の精巣に発生する悪性腫瘍です。 精巣は、男性ホルモンを産生する細胞と精子を作る細胞で形成されていますが、精巣腫瘍は9割以上が精子を作る細胞から発生します。 発生する年齢は他の癌と異なり、乳幼児〜青壮年に多いという特徴があります。そのため精巣腫瘍は、男性の悪性腫瘍では1%を占める比較的まれな疾患ですが、25〜34歳の男子の癌死亡率では1位を占めています。
 
危険因子 病因として、停留精巣(精巣が陰嚢まで降りていない状態)の方の場合、停留精巣がない方より3〜14倍の高いリスクで発生するといわれています。 また、ウイルス性精巣炎にかかったことがある場合、外傷後に精巣が萎縮した場合、胎児期の母体内でエストロゲンが過剰であった場合などとの関連性が指摘されています。 他に、社会的要因として性的早熟化と発生率の増加との関連性も指摘されています。
 
症状 通常は一側の陰嚢内に結節を触知したり、無痛性の陰嚢腫大で、患者さん自身によって発見されることが多いです。 精巣上体炎や精索捻転症などの病気でも陰嚢内にしこりを触れますが、これらの場合痛みや熱を伴うことが多いという特徴があります。 他に、腹部や肛門、あるいは陰嚢の鈍い痛みや重たい感じを伴うこともあります。
 
進行性(病状が進行した)精巣腫瘍では、陰嚢内容の腫大の他、腫瘍の転移部位によりそれに伴う症状を認めることもあります。
 
診断 診断には泌尿器科医師による触診所見の他、超音波検査、MRI検査、CT検査といった画像診断が有用です。 超音波検査では、陰嚢内の正常精巣の有無、病変部の位置や内部構造から診断することが出来ます。 MRI検査は、超音波診断で鑑別困難な場合に施行します。 精巣内の出血や嚢胞(液体がたまった袋)などの器質的診断に有用です。CT検査は主に転移部位の検索・診断に用いられます。 精巣腫瘍の転移は腹部の大動脈、大静脈周囲のリンパ節が多いのですが、そのほか、肝転移、肺転移、脳転移の有無などを診断します。 また、精巣腫瘍の構成成分の診断や初期の転移診断や治療効果の判定、再発の早期診断に腫瘍マーカー(AFP、HCG)が有用です。
 
治療法 精巣腫瘍患者に対しては、たとえ遠隔転移を有していても、診断的意味も含め、まず精巣摘除術が施行されます。 摘出された精巣腫瘍から組織型を判定し、さらに様々な画像診断から病期(進行度)を確定し、それに基づいて治療法を決定します。
 
治療には、外科的治療(手術)、全身化学療法、放射線療法などがあります。 最近は効果の高い抗癌剤と手術療法の併用で、転移のある癌でさえも8〜9割の確率で治すことが出来るようになってきました。
 
 
●精巣・陰嚢内感染症
  1. 精巣上体炎(副睾丸炎)
    • 精子は精巣(睾丸)で作られ、精巣上体という臓器(副睾丸)を通過していく過程で成熟します。 精巣上体炎とは精巣上体に細菌が繁殖し炎症が起こったものです。
      精巣上体に炎症が起きると陰嚢の脹れ、痛み、発熱をきたします。 高齢者では前立腺肥大症など基礎疾患を有し尿路感染から波及するため細菌性が多いですが、35歳以下の性的活動年齢では尿道炎で認められるクラミジアが原因菌のことが多いといわれています。 しかし尿道から細菌が入り込むのが原因といわれていますが尿道炎症状が先行しないことが多いようです。
      治療は細菌感染なので抗生剤を症状や発熱など炎症の程度により2〜3週間投与します。 腫れた睾丸を持ち上げた状態で固定して冷やすと、症状自体は軽快します。 痛みがひくには数日、腫れがひくには数週間を要します。
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      注意すべき点は、精巣捻転という病気と区別をつけることです。 別項にて述べているように精巣に行く血管が陰嚢内でねじれる病気ですが、精巣上体炎と同じように陰嚢部の腫れと痛みがあります。 思春期前のお子さんに多く治療も早期に手術をしないと精巣に血が行かず壊死してしまう恐れがあるので専門医での診察を要します。
       
  2. 精巣炎(睾丸炎)
    • 大人になっておたふく風邪(流行性耳下腺炎)にかかると子供ができにくくなるといわれている原因が精巣炎です。 細菌感染はまれで、ほとんどがおたふく風邪を引き起こすムンプスウィルスが原因です。
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      症状は精巣の腫大(腫れ)、痛み、発熱と精巣上体炎と同様なものです。 流行性耳下腺炎に特徴的な頬の症状が治まるころに起きることが多く、青少年期に流行性耳下腺炎になった男性の約20〜35%に精巣炎がみられ、時に両側性に発症することもあります。
      精巣は精子を造る器官ですのでその炎症は不妊の原因になりかねません。 おたふく風邪から起こった精巣炎のうち約30%で精巣は萎縮をきたし、男性不妊症になると言われています。
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      治療は精巣の血流を保つような方法を考えなければなりません。 泌尿器科で適切な治療を行えば精細胞障害もある程度軽減することは可能です。
      ワクチンは流行性耳下腺炎の発症を防ぐためには有効ですが、精巣炎を併発してしまってからでは当然のことながら効果はありません。
       
●睾丸回転症
睾丸回転症は、精索を軸として睾丸が回転し、睾丸及び副睾丸に血流障害が起こり、時間の経過と共に、うっ血から壊死に至る疾患で、精巣捻転症とも言います。
思春期に好発するが、新生児期、小児期、成人にも見られます。 小児の急性陰嚢症(陰嚢部に有痛性腫脹をきたす急性の疾患群)の代表的な疾患で、緊急な処置、治療を要します。
 
原因 解剖学的な異常による睾丸固定不全(鞘状突起と精索の付着異常など)、睾丸挙筋のれん縮、外傷などが関連していると考えられている。
 
症状 突然に起こる陰嚢部の強い痛みと発赤、腫脹で通常は明らかな誘因はなく、夜間に発症する事も多い。また悪心嘔吐を伴う下腹部痛がみられる事もある。
 
診断 上記症状がみられたら本症を疑い、先ず触診にて睾丸、副睾丸の位置関係、痛みの部位、Prehn徴候(睾丸挙上による痛みの増強)などをみる。さらに他疾患との鑑別や血流状態を見るために、超音波検査、カラードップラー血流検査、MRI検査、睾丸シンチグラフィーなどが行われる事もあるが、いずれも簡便な検査ではなく、本症が疑われる時は緊急手術が優先されることも多い。
鑑別すべき疾患として、睾丸付属器捻転症、急性副睾丸炎、睾丸腫瘍(内部の出血)、睾丸外傷、鼠径ヘルニア嵌頓などがある。
 
治療法 陰嚢外より手で睾丸を元の状態に戻す用手整復を試みるが、整復できなければ緊急手術を行う。 一般に発症から6時間以内であれば、手術により睾丸機能の回復が望めるとされている。 手術は、睾丸の回転を解除し、血流が戻れば睾丸固定術を行う。 血流が戻らず壊死に陥っている場合は摘出する。 また反対側の睾丸にも同様に睾丸回転症を発症する恐れがあるため、予防的に睾丸固定術を同時に行う事もある。
 
 
●陰嚢水腫
精巣(睾丸)や精巣の血管や精管は鞘膜という袋に覆われています。 陰嚢水腫とは、その袋の中に液体が貯留した状態です。 陰嚢部に貯留した場合が陰嚢水腫で、それより頭側の精索部に貯留した場合が精索水腫です。 乳幼児によく見られる病気で約6%の赤ちゃんに認められます。
 
原因 陰嚢水腫は交通性、非交通性と2種類あります。
交通性
これは小児に多いです。 通常お腹と陰嚢はその間に壁があってつながっていないのですが、まだ発育が不十分でつながっているため、お腹の水が陰嚢内に貯まってしまい起こります。
 
非交通性
これは大人に多いです。 陰嚢の内側にある袋に滲出液が貯留し、起こります。
 
症状 通常痛みがなく、陰嚢が腫れています。 痛みがある場合は他の病気の可能性がありますので、夜中でもすぐに受診するようにして下さい。
 
診断 硬くなく弾力性があり、光を当てると光が透けて見えます。 
交通性の陰嚢水腫の場合は体位によって大きさが変化し、特に朝よりも夕方の方が、腫れが大きいのが特徴です。 
非交通性の場合は体位や時間帯によって変化はありません。 診断にはペンライトや超音波検査を用いて行います。
 
治療法 1歳までは95%が自然に治るため、なにもせずに経過観察します。 しかし1歳を超えると自然に治ることは難しくなります。 体に害はないですが、歩行困難や美容上の問題があるので手術が必要です。
この手術は全身麻酔で鼠径部に3cm程度の切開で行います。
大人の場合は液体を注射器で吸引することもありますが、一時的ですぐに貯まってきます。根本的に治すためにはやはり手術が必要です。 通常は腰椎麻酔で、陰嚢に数cm切開して行います。
 
 
●停留精巣
精巣(睾丸)は精子や男性ホルモンを造る大切な臓器です。 胎児の時には精巣はお腹の中にあり、妊娠3ヶ月頃から次第に下へ降りて行きます。 ほとんどの男児では出産の頃までに両方の鼠径管を通って、陰嚢の中に下降します。 何らかの原因で途中、下降を止めてしまったものを停留精巣といいます。
出生直後にはっきりしなくても、生後6ヶ月頃までは自然に下降することもあります。 1歳になっても陰嚢内に下降していない場合は治療が必要です。
お風呂上りなどでは、精巣は陰嚢内にあり比較的容易に触れるものの、赤ちゃんが泣いている時や寒い時期には触れにくいことがあります。 これらは移動精巣と呼び、ほとんどの場合で治療は必要ありません。
停留精巣はそのままにしておくと、精子を造る機能が低下し、男子不妊症の原因になります。 また、鼠径ヘルニアや精巣癌の原因にもなります。 精巣癌の発生する確率は正常の男児と比較して、40〜50倍高いともいわれています。
 
泌尿器科外来での検査は陰嚢の触診、陰嚢エコー検査を行います。 精巣が体内にあるか、どこにも存在しない(精巣欠損)かも知れない場合は、MRI等でさらに詳しく検査します。
 
治療は手術を行います。 患側の鼠径部の皮膚を1〜2p切開し、精巣と精索(精管、精系血管)を剥離したあと、陰嚢内に固定します。 ただ、精巣がすでに萎縮していたり、精索が短く固定が困難な場合は精巣を摘出することもあります。
手術の時期は1歳頃が望ましく、遅くとも2歳頃までに手術を受ける必要があります。 入院期間は病院によって多少異なりますが、経過が順調であれば術後、2〜3日で退院可能です。
赤ちゃんは皮下脂肪が厚く、精巣の大きさも個体差があり、触診には経験が必要です。 不安な場合は一度、泌尿器科医にご相談されることをお勧めします。
 
精巣腫瘍 精巣・陰嚢内感染症 睾丸回転症 陰嚢水腫 停留精巣

泌尿器科でよく見る病気 <INDEX>
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尿路結石 性感染症 ED

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