NPO法人 山口県東部泌尿器科研究会
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泌尿器科でよく見る病気
前立腺の病気
前立腺肥大症 前立腺癌 前立腺炎
 
●前立腺肥大症
前立腺・尿道 
   『前立腺とは?・・・』
 
   ・男性の膀胱出口の尿道を取り巻いている。
   ・正常の前立腺はクルミ大の大きさで焼く20g。
   ・肥大すると、内部の尿道が圧迫され排尿障害が起こる。
 
機械的閉塞と機能的閉塞
機械的閉塞 機能的閉塞
前立腺の内側の組織が増殖し、肥大してくる。尿道が狭くなり、膀胱も圧迫される。 前立腺の肥大などをきっかけに、自律神経が過敏になり、前立腺や尿道が過剰に収縮する。

前立腺肥大症による排尿障害は、上記ふたつの要因のいずれか、または両方によって起こります。
 
前立腺肥大症による排尿障害の症状
排尿困難 前立腺肥大に伴い排尿困難が生ずる。
【機械的閉塞】
・肥大腺腫による尿道の圧迫
 
【機能的閉塞】
・前立腺肥大症に伴って増加したα1受容体による尿道の過剰収縮
 
頻 尿
【刺激によるもの】
肥大した前立腺が膀胱頚部を刺激することにより尿意を生じる
前立腺肥大症の初期症状
 
【残尿によるもの】
排尿困難により残尿量が多くなり、少し尿が増えても尿意を生じる。
前立腺肥大症の中期にみられる。
尿失禁
【切迫性尿失禁】
残尿、膀胱機能低下(膀胱壁の肥厚化、線維化)、膀胱の無意識の収縮などによる尿意が強く我慢できず、トイレに間に合わない。
  
【溢流性尿失禁】
多量の残尿により膀胱内圧が高まり、括約筋が耐えられなくなり尿が漏れる。
重度の前立腺肥大症に起こる。
 
尿 閉 尿閉は尿が膀胱内に充満しているにもかかわらず排尿できない状態をいう。
【急性尿閉】
前立腺肥大症の中期以降に起こりやすい。
寒冷、飲酒などにより交感神経が強く興奮する事により前立腺が収縮して尿閉となる。
 
【慢性尿閉】
長期にわたる残尿により膀胱平滑筋がのびきってしまって自力で排尿ができず尿閉が起こる。
腎障害を起こす可能性がある。
 
 
前立腺肥大症患者の推移
日本の前立腺肥大症患者数は60.1万人(1998年)で、1995年以降急増しています。
高齢化に伴い、患者数は今後さらに増加すると予測されます。
 
日本における前立腺肥大症の受療患者数
一般的な診断と検査
■問診(I−PSS)
排尿障害の重症度を点数で把握します。
以下のA〜Gの合計点数によって治療法を検討します。
Q. あなたの状態についておたずねします。
下のA〜Gの質問に対する答えが、右の欄のどれに当てはまりますか?
当てはまる点数を合計してください。
国際前立腺症状スコア(I−PSS)
質 問 なし あまり
ない
時々
ある
2回に1回
くらいある
しばしば ほとんど
いつも
排尿後、尿がまだ残っている感じがありますか?
排尿後、2時間以内にもう一度トイレに行く事はありますか?
排尿途中に尿が途切れる事はありますか?
排尿を我慢する事がつらい時はありますか?
尿の勢いが弱いことがありますか?
排尿を開始する時、お腹に力を入れる必要がありますか?
就寝中に平均して何回トイレに行きますか? 1 2 3 4 5回以上
上記の合計点数
あなたの症状の満足度
今のままの排尿状態がずっと続くとしたら、満足ですか?
満足 大体満足 どちらでもない やや不満 不満 つらい
 
【検査】
腹部エコー検査 前立腺や膀胱の形・大きさ・容積、残尿量などを調べます。
血液検査
(前立腺特異抗原:PSA)
前立腺がんとの鑑別をします。
直腸内指診(直腸診) 直腸の壁越しに触診して、前立腺の大きさや硬さをしらべます。
残尿測定 エコーを用いたり、尿道に管を入れてしらべます。
尿流測定 実際に排尿して、排尿の勢いや排尿にかかる時間をしらべます。
経直腸前立腺エコー 直腸のほうから前立腺や膀胱の形や大きさを詳しくしらべます。
X腺検査 膀胱や尿道の様子を撮影します。造影剤を注射します。
 
【治療法】
薬物療法
●α1遮断薬(αブロッカー)
自律神経の過剰な命令によって緊張している前立腺や尿道の筋肉をゆるめリラックスさせ、排尿障害の各種症状を改善します。
 
●抗男性ホルモン剤
男性ホルモンのはたらきを抑え、肥大した前立腺を縮小させようとするものです。
 
●漢方薬、植物製剤
炎症や腫れを抑え、自覚症状を軽くしようとするものです。
 
手術療法 ●TUP-P(経尿道的前立腺切除術)
●前立腺被膜下摘出術(前立腺が大きい場合) 
低侵襲性治療 ●温熱・高温度治療
●前立腺組織内レーザー凝固術
●尿道ステント留置法
 
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●前立腺癌
『前立腺癌とは・・・』
 
前立腺は男性にだけあり、精液の一部をつくる臓器です。前立腺は、恥骨(骨盤を形成する骨のひとつで、下腹部に触れることができます)の裏側に位置し、栗の実のような形をしています。 この前立腺に癌が発生する病気が前立腺癌です。
  1. 前立腺癌の統計
    • 年齢別にみた前立腺癌の罹患(りかん)率は、65歳以上で増加します。 罹患率の年次推移は、1975年以降増加していますが、その理由の1つは、Prostate Specific Antigen (PSA)による診断方法の普及によるものです。 この方法によって、従来の直腸指診では困難であった早期の癌が発見されるようになりました。
      日本人の罹患率は、欧米諸国およびアメリカの日系移民より低く、欧米諸国の中ではアメリカ黒人の罹患率が最も高い傾向があります。
       
  2. 前立腺癌の発生
    • 癌は、前立腺の細胞が正常の細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。 最近、遺伝子の異常が原因といわれていますが、正常細胞がなぜがん化するのかまだ十分に解明されていないのが現状です。 がんは周囲の正常組織や器官を破壊して増殖し、他の臓器に拡がり腫瘤(しゅりゅう)を形成します。 他の臓器に癌が拡がることを転移と呼びます。 前立腺がんが、よく転移する臓器としてリンパ節と骨があげられます。
 
症状
早期の前立腺癌に特有の症状はありません。 あるとしてもその多くは前立腺肥大症に伴う症状です。 具体的には排尿困難(尿が出にくい)、頻尿(尿の回数が多い)、残尿感(排尿後、尿が出切らないで残った感じがする)、夜間多尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに排尿を我慢できない状態)、下腹部不快感などです。 このような症状があり、たまたま病院を受診した際に前立腺癌の検診が併せて施行され、検査の結果、前立腺癌が発見されることがほとんどです。 また前立腺癌が進行しても転移がない場合の症状は前立腺肥大症と大差はありません。
 
 
診断
【PSA検査】
前立腺癌の診断に関して、最も重要なのは前立腺特異抗原(PSAピーエスエー)とよばれる腫瘍マーカーの採血です。 PSAはとても敏感な腫瘍マーカーであり、基本的に前立腺の異常のみを検知します。 PSA値の測定は前立腺癌の早期発見に必須の項目です。 ただPSA値が異常であれば、そのすべてが癌になるというわけではありませんし、逆にPSA値が正常の場合でも前立腺癌が発生していないということにもなりません。 あくまで、前立腺癌を発見するきっかけとなるひとつの指標です。 PSAの測定法にはさまざまありますが、よく使われているタンデムR法では4〜10ng/mlがいわゆる「グレーゾーン」といわれており、その場合には25〜30%にがんが発見されます。 ただし4ng/ml以下でも前立腺癌が発見されることもあります。 PSA値が10ng/mlを超える場合には50〜80%に癌が発見されます。100ng/mlを超える場合には前立腺癌が強く疑われ、さらには転移も疑われます。
 
PSA値あるいは直腸診、経直腸的前立腺超音波検査により前立腺癌の疑いがある場合、年齢も考慮しながら最終的な診断を行うために前立腺生検が実施されます。 近年では超音波をガイドにして前立腺を描出しておき、細い針で前立腺を刺し、6ヵ所かそれ以上から組織を採取する「系統的生検」が一般的です。
 
 
治療法
前立腺癌の治療法には、「手術療法」、「放射線治療」、「内分泌療法」、さらには特別な治療を実施せず、当面経過観察する「待機療法」があります。 ご本人の年齢と期待余命(これから先、どのくらい平均的に生きられることができるかという見通し)、最終的にはご自身の病気に対する考え方などによります。 前立腺癌の正確な病期診断には限界があるため、グリーソンスコアーや治療前のPSA値なども参考にしながら治療法が考えられています。
  1. 待機療法
    • 前立腺生検の結果、比較的おとなしいがんが極少量のみ認められ、とくに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合に行われる方法です。 具体的にはグリーソンスコアーが6かそれ以下で、PSAが20ng/ml以下、病期T1c-T2bまでの病態に対してPSA値を定期的に測定して、その上昇率を確認します。 PSA値が倍になる時間(PSA倍加時間)が2年以上と評価される場合にはそのまま経過観察で良いのではと考えられています。特に積極的な治療を行わないため、当然、副作用も軽微ですが、がんと診断されて「特に何もしない」ことに対する精神的な負担を感じる人にはあまりこの方法は向いていません。
       
  2. 手術療法
    • 前立腺、精嚢を摘出し尿道と膀胱を吻合する方法です。
      リンパ節の転移の有無を確認するためリンパ節郭清が一般的に施行されます。 がんが前立腺内にとどまっており、10年以上の期待余命が期待される場合には最も生存率を高く保障できる治療法と認識されています。
      手術の方法には下腹部を切開して前立腺を摘出する場合(恥骨後式前立腺全摘除術)が一般的です。 この治療に伴う副作用としては尿失禁と性機能障害があります。 

    ■手術支援ロボットda Vinci サージカルシステム(以下「ダヴィンチ」)とは

    優れた機能で術者をサポートし、手術の安全性向上と低侵襲を実現可能とした医療ロボットのことです。
    近年、鏡視下手術(腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術など)は患者さんの負担が少ない低侵襲の術式として広く普及しています。「ダヴィンチ」はこれら鏡視下手術の特徴を活かし、ロボット機能を付加したことで、従来不可能とされていた角度からの視野の確保と、鉗子の自在で細密な動きを可能にしました。この優れた技術と操作性は患者さんや医師にとっても大きなプラスの作用をもたらします。
     
     
    「ダヴィンチ」は主に
    ロボットアーム部(先端には内視鏡手術器具の鉗子やメスなどが取り付けてあり、3本のアーム及び1本のカメラが付いています)

     
    ■操作部(執刀医はここでロボットアームを操作して手術を行います)

     
    ■助手用のモニター

     
    以上の3つの医療機器で構成されています。
     
    その特徴として
    1.高解像度3次元画像
    「ダヴィンチ」手術の最大のメリットは2次元映像の様に平面で見るのではなく3次元で映像処理が行えるため、医師は奥行き感がある映像で手術が行えます。また、720pのHDビジョンにより組織面や重要な解剖を細部まで映し出すことが可能です。


    2.EndoWristインストゥルメント
    2回転以上もまわるリスト、つかむ、はがすも自在、自分の手指のような鉗子が特徴です。術者が3D画面を見ながら遠隔操作で装置を動かすと、その手の動きがコンピュータを通してロボットに忠実に伝わり、鉗子が連動して手術を行います。加えて手ぶれを防止し、突発的な動きを制御する機能を有しています。

     

     
    【ロボット支援手術による前立腺全摘術について】
    前立腺癌患者すべてがロボット支援手術の適応があるわけではありません。
    年齢や併存症、既往歴、手術歴などを始め、もちろん癌の悪性度や進行度によって慎重に適応を判断します。
    従来の開腹手術と比較して、「ダヴィンチ」による手術に期待されることは
    1.術後尿失禁の早期回復
    2.性機能温存(神経温存手術が可能かどうかは癌の進行度などによる)
    3.術後疼痛の軽減
    4.出血量の軽減
    などが挙げられます。
     
     
  3. 放射線治療
    • 放射線を使って癌細胞の遺伝子を破壊し細胞分裂をできなくする方法で、前立腺癌に対する放射線治療はさまざまな方法が登場してきています。 前立腺癌に対する放射線治療には手術療法と同様に転移のない前立腺癌に対する根治を目的とした場合と、骨転移などによる痛みの緩和、あるいは骨折予防のために使用される場合があります。
       
      【外照射法】
      転移のない前立腺癌に対して、身体の外から患部である前立腺に放射線を照射します。前立腺がんに対する放射線治療では放射線の総量が多くなればなるほどその効果が高いことが知られています。この治療中の副作用としては、前立腺のすぐ後ろに直腸があるため、頻便や排便痛、出血、また膀胱への刺激により頻尿や排尿痛などが挙げられ、照射方法によっては放射線皮膚炎や下痢が生ずることがあります。しかし通常は外来通院で実施可能な程度であり、治療終了後、時間がたつと次第に落ち着いてきます。放射線治療は手術療法後に再発を来した場合にも使用されます。
       
      【密封小線源療法(組織内照射法)】
      小さな粒状の容器に放射線を放出する物質(ヨード125とよばれるアイソトープ)を密封し、これを前立腺へ埋め込む治療法です。 多くは半身麻酔のもとに肛門から挿入した超音波で確認しながら、計画された場所に専用の機械を使用して会陰(睾丸と肛門の間)からアイソトープを埋め込みます。 外照射法と比較して数日で治療が終了し、前立腺に高濃度の放射線を照射することが可能であり、副作用も軽度です。埋め込まれた放射性物質は半年くらいで効力を失い、取り出す必要はありません。埋込み直後には一部生活に制限があります。
       
      この治療は前立腺内にとどまった前立腺癌の中でも悪性度が低い癌がよい適応とされています。 具体的にはPSA値が10ng/ml以下でかつ、グリーソンスコアーで6かそれ以下が単独治療の対象とされています。 この場合には手術療法と同様の効果が得られるとされています。 それ以外の病態では密封小線源治療に外照射法と組み合わせて治療することが薦められています。 前立腺肥大症に対して内視鏡的に前立腺を削りとったあとには、小線源を埋め込めない部位ができてしまうため施行できません。 また大きすぎる前立腺に対してはそのままでは埋込みが困難です。
       
      本邦においてこの治療法は2003年9月から開始されましたが、まだ時間が経過しておらず、副作用についてはまだ十分検証されているとは言えませんし、またこの治療の後、再発した場合には手術療法は困難かもしれないと考えられています。
       

  4. 内分泌療法(ホルモン療法)
    • 前立腺癌は男性ホルモンの影響で病気が進むという特徴があります。 男性ホルモンは主には精巣、一部は副腎からも分泌されます。 男性ホルモンを遮断すると癌の勢いがなくなります。 このことを利用した治療法が内分泌療法(ホルモン療法とも呼ばれています)。
       
      方法としては精巣を手術的に除去するか、LH-RH (レルエイチアールエイチ)アナログと呼ばれている注射が使用されます。 注射剤は1ヵ月あるいは3ヵ月に1度注射することで精巣の働きをなくします。 また男性ホルモンががんに作用しなくする抗男性ホルモン剤という飲み薬を服用することもあります。 抗男性ホルモン剤は副腎からの男性ホルモンの働きも遮断します。 現在、内分泌療法の初期段階では注射あるいは飲み薬が単独あるいは、併用して使用されることが一般的です。
       
      内分泌療法の問題点は長く治療を続けていると、いずれは反応が弱くなり、落ち着いていた病状がぶり返すことです。 この状態を「再燃」と呼んでいます。 再燃状態となると女性ホルモン剤や副腎皮質ホルモン剤などが使用されますが、これも当初は反応が認められても次第に効果が弱くなります。内分泌療法は前立腺癌に対して有効な治療法ですが、この治療のみで完治することはまれであると考えられています。
       
      内分泌療法は転移のある前立腺癌に対して施行される方法です。これは転移を来していても、もともと転移したがん細胞は前立腺癌の性格をもっているため、転移した部位にも作用してくれるからです。 また高齢者の場合や患者本人の希望などにより、手術療法あるいは放射線治療を実施されなかった転移のない前立腺癌に対しても施行されます。 あるいは手術療法や放射線治療後に再発した場合にも使用されます。
       
      内分泌療法の副作用としては急に発汗したり、のぼせやすくなる”hotflash”(ホットフラッシュ)と呼ばれる症状が起こることが一般的です。 抗男性ホルモン剤を使用した場合には乳房痛も認められることがあります。 また下腹部に脂肪がつきやすく体重が増加しやすくなります。 女性ホルモン剤では心臓や脳血管に悪影響を及ぼし、重篤な場合には心不全や脳梗塞などが起こることがあります。
      内分泌療法を施行した場合、多くの場合に性機能が障害されます。
       
 
本文は『国立ガンセンタ-のホ−ムペ−ジ がん情報センタ−、前立腺がん』より抜粋したものです。
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/prostate.html
 
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●前立腺炎
前立腺は男性特有の生殖器官で、膀胱の出口にあって、尿道を取り巻くように存在しています。 形状は栗の実の様な形で、その働きは分泌腺としてホルモンや生理活性部物質の分泌また精液の一部となる前立腺液の分泌等を行うと共に射精の時のポンプの様な働きをしています。 また、排尿に関しては主に自律神経を介して膀胱の蓄尿あるいは排尿に重要な役割を果たしています。
 
 
『前立腺炎とは・・・』
前立腺炎は文字どうり前立腺の炎症であり、前立腺肥大症、前立腺がんと共に前立腺3大疾患の1つであります。 その特徴は肥大症や癌が圧倒的に高齢者に多く発生するのに反し、前立腺炎は高齢者に多い傾向はありますが、10代後半からあらゆる年代層に発生します。
前立腺炎は前記しましたように、炎症性疾患でありその発症の経過や症状などにより次に述べますように急性前立腺炎慢性前立腺炎に大別されます。
 
【急性前立腺炎】
 
発症・原因
症状が急速に且つ強く起こり、進行は速く急性炎症性疾患である。 一般に細菌による感染症で原因菌の多くはグラム陰性桿菌であり、そのほとんどは大腸菌です。 感染経路は尿道を介し、尿道炎、膀胱炎等の細菌感染が前立腺に波及してくる場合や、あるいは血流にのった細菌が前立腺に至って感染を起こすことも稀ではありません。
 
その外、性感染症の併発するものとし、淋菌、クラミジア・トリコマティス、膣トリコモナス等が原因菌となることも少なくありません。 また、前立腺肥大症や尿道狭窄等の合併症として、急性前立腺炎が引き起こされるケースもみられます。
 
 
症 状
急性の炎症所見として、比較的高度な排尿痛、頻尿、残尿感、会陰部や肛門周囲の不快感や痛みを認め、発症とともに38℃以上の熱が出ることが多く、寒気やふるえを伴うことも稀ではない。 また前立腺の腫脹をきたし、尿が出にくくなったり(排尿困難)、さらに進行すればまったく出なくなったり(尿閉)することも多い。
 
 
検査・診断
検尿、前立腺液の検査及び細菌培養、血液検査(抹消血検査やCRP検査)、理学的検査として直腸診により前立腺を触診し、必要であれば前立腺マッサージを行い前立腺液を採集、前記の如く検鏡あるいは細菌培養検査を行います。
これらの検査により診断は比較的容易に行えます。
 
 
治療法
急性前立腺炎の治療の中心は病原性微生物の除去であります。 主に抗生剤あるいは抗菌製剤の内服を行いますが、症状が強く、効果が不十分なことも多いため、しばしば抗生剤の注射が用いられます。 前記しましたように抗生剤の選択には細菌培養や病原性微生物の決定が大変有効です。 このような原因菌治療に加え、痛みを伴う炎症に対しては鎮痛消炎剤の投与や前立腺炎に対する植物製剤等の投与が有効です。
 
一般に治療に対する反応は、症状が強く急速な経過をとる割には良好で、1〜2週間の経過で治癒することが多い。 ただし、一部の患者さんには症状が遷延化し慢性前立腺炎に移行することがあるので、注意する必要があります。
 
 
【慢性前立腺炎】
 
発症・原因
慢性前立腺炎の発症の形態には、2つの発症形態が知られている。 1つは急性前立腺炎からの移行で、急性症状の速やかな症状の改善・消失をみず、完治することなく症状が遷延する場合である。 もう1つは、始めより比較的軽い症状で始まり、急速に増悪することはないが、症状が十分改善しない、あるいは改善増悪軽快を繰り返す場合である。
前者の急性前立腺からの移行の場合の発生原因は、急性前立腺炎の場合と同様、病原力の強い細菌あるいは病原性微生物であり、急性期の治療が十分奏効し得なかったものか、菌交代を起こしたものと考えられる。 一方後者においては、さらに次の2つの原因が考えられる。
  1. 弱毒性細菌や微生物の感染で、始めより軽い症状で、またゆっくり発症したものと思われる。
     
  2. 細菌や微生物の感染による炎症ではなく、前立腺液の鬱滞、リンパの鬱滞、鬱血、あるいは前立腺結石等、病原性微生物以外の物理的、化学的な慢性的な刺激に起因した炎症性反応によるものが考えられます。
 
 
症 状
急性前立腺炎と同じような症状が現れることが多いのですが、急性に比べ軽症です。 発熱、排尿障害(排尿困難、尿閉)等もそれほど顕著には現れません。 一般には会陰部の痛みや不快感、また頻尿、残尿感等の膀胱・尿道刺激症状等が主なもので、症状も軽い場合が多いのですが、比較的症状が長期にわたり完全に消失しないため、訴えは強い場合も少なくありません。
 
 
検査・診断
慢性前立腺炎の検査は急性前立腺炎の場合とほぼ同様であり、検体検査は検尿、前立腺液の検査、細菌培養等が主体であり、血液生化学的検査は施行されても強い異常を認めることはほとんどない。
理学的検査として直腸診による前立腺触診を行い、直接前立腺部の軽度~中等度の圧痛や触感等を検討する。
病原性微生物に起因する慢性前立腺炎の診断は比較的容易であるが、非感染性慢性前立腺炎は自覚症状、あるいは理学所見以外異常所見が少なく、診断はやや困難である。
 
 
治療法
病原性微生物に起因する感染性慢性前立腺炎の場合は、抗菌剤あるいは抗生剤の投与が治療の中心となり、必要に応じて鎮痛剤や消炎剤、特に前立腺炎の場合は植物製剤の投与も有効であります。
一方非感染性慢性前立腺炎の場合は、抗菌剤や抗生剤は投与されず、いわゆる消炎剤や植物製剤の投与による抗炎症治療を行います。 さらに、前立腺の鬱血や前立腺液の鬱滞の改善の目的で前立腺マッサージ等も行われることもあります。 また前立腺温熱療法も有効であると報告されています。
 
前立腺肥大症 前立腺癌 前立腺炎

泌尿器科でよく見る病気 <INDEX>
検尿の異常 腎臓の病気 膀胱の病気 前立腺の病気 精巣と陰嚢の病気
尿路結石 性感染症 ED



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