NPO法人 山口県東部泌尿器科研究会
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泌尿器科でよく見る病気
膀胱の病気
膀胱癌 膀胱の感染症 尿失禁 過活動膀胱
 
●膀胱癌
膀胱は骨盤内に位置し、腎臓で作られた尿が尿管を経て蓄尿する袋であります。 膀胱は貯留した尿により伸展しますと、尿意を感じ筋肉が収縮することによって排尿して、膀胱より尿を出し切るという働きがあります。 膀胱の内面は移行上皮に被われた粘膜で、膀胱癌はこれが癌化することで引き起こされ、組織学的には移行上皮癌が90%以上を占めております。 膀胱癌には膀胱粘膜の表面にでき悪性度の比較的低い表在性膀胱癌と、悪性度が高く浸潤転移を起こしやすい浸潤性膀胱癌があります。

症状
  1. 肉眼的血尿
    • 膀胱癌の初期の症状としては痛みが無いのに尿に血が混じるという無症候性の肉眼的血尿が特徴です。 特に、病期の初期には1〜3日間ほど血尿が続くがその後は出なくなって、また1ヵ月後に血尿を繰り返すことがあります。 そのため、反復性の無症候性血尿は注意が必要です。
  2. 排尿痛
    • 排尿痛などを伴う血尿はむしろ膀胱炎や尿路結石などの場合が多いのです。
  3. 顕微鏡的血尿
    • 肉眼的に正常でも健康診断で尿潜血(顕微鏡的血尿)が指摘されることがあります。 顕微鏡的血尿は検査の結果によってはあまり心配のない場合も多いのですが、時に何らかの腎臓病や癌・結石などがみつかることがありますので、尿潜血を指摘されたら一度専門医の診察を受けてください。
診断
  1. 膀胱内視鏡検査
    • 膀胱癌の診断では、膀胱内視鏡検査が一番有用です。
  2. 排泄性腎盂造影
    • 膀胱癌があると、上部の腎・尿管にも癌を合併することがある。
  3. CT・MRI検査
    • 膀胱周囲の浸潤や他の臓器への転移が無いかを評価できる。
治療法
  1. 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)
    • 表在性膀胱癌はお腹を切らずに内視鏡手術により治療が可能です。
  2. 動注化学療法+放射線療法
    • 浸潤性膀胱癌に対する動注化学療法の成績を向上させるために放射線療法を併用する治療法です。 多くの場合、膀胱保存を目的に行われ、放射線量は30Gyから40Gy照射線量が用いられる。
      癌が消滅していれば膀胱保存が可能であるが、残存しているものはTUR-Btをおこない、浸潤度を評価します。
  3. 膀胱内抗癌剤注入法
    • 膀胱を温存できた場合は、膀胱癌が膀胱内に再発しやすいために治療後も定期的な内視鏡検査が大事です。この膀胱内再発を予防するために膀胱内に薬を注入する治療も行われ、最近従来の抗癌剤注入の他、BCG注入療法が期待されています。
  4. 膀胱全摘出術
    • 浸潤性膀胱癌の場合は根治を目的に膀胱を摘出する手術を行います。膀胱をとると尿路変更といってお腹に穴(ストーマ)をあけ集尿袋をつけることになる場合が多いのですが、この尿路変更の方法には尿管皮膚瘻や回腸導管法の他、最近は畜尿能力のある代用膀胱を再建する手術も普及してきました。
  5. 集学的治療
    • 進行した膀胱癌には有力な抗癌剤が出現して、化学療法もかなり効くようになったほか、放射線療法も有効で、これらの手術・化学療法・放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。
 
●膀胱の感染症(膀胱炎)
膀胱粘膜に細菌感染を引き起し、頻尿、排尿痛、尿混濁を伴うもので(発熱は通常認めない)、発症のピークは性的活動期の20歳代及び閉経後の中高 年に多くみられる。 原因菌は約7割を大腸菌が占め、感染経路の多くは外尿道口からの細菌侵入による逆行性感染である。 中高年女性の場合、腟内細菌叢の乱れ (病的細菌の異常増殖)のこともあり、難治性、反復感染のこともある。
 
一般的には、急性膀胱炎、慢性膀胱炎に分けられ、基本的に女性がほとんどである。 成人男性には稀で、頻回に繰り返すようであれば、何らかの基礎疾患(前立腺疾患、膀胱腫瘍、尿路結石等)を有することがあり専門医の受診が望ましい。
 
急性膀胱炎
  1. 診断
    • 臨床症状:頻尿、排尿痛、尿混濁
    • 膿尿の確認
    • 細菌尿の確認
  2. 治療
    • 般的には経口抗菌薬を3日間程度内服し、水分摂取を励行する。
慢性膀胱炎 膀胱炎を繰り返し、抗菌薬の反応が悪い。症状は急性膀胱炎と同様であるが、難治性である。

原因としては、女性の場合約6割が神経因性膀胱(正常な排尿ができず、残尿が多い)で、男性の場合前立腺疾患(前立腺肥大症、前立腺癌、神経因性膀胱、膀胱腫瘍等)である。いずれにしても原因となる尿路基礎疾患を有することが多く専門医の診察が必要である。

治療は抗菌薬の投与を1週間?10日程度行うが、いずれにしても原因となる基礎疾患の特定及び除去が必要である。
間質性膀胱炎 間質性膀胱炎の症状は多くは頻尿で、細菌性膀胱炎のような排尿時痛や尿混濁を伴わないことが多い。 排尿に伴う症状よりも、蓄尿時(尿が膀胱に貯 まった時)の膀胱不快感や下腹部痛として症状を訴えられることが多い。
 
一般的には通常の膀胱炎として治療されていることが多いが抗菌薬投与にても症状の改 善を認めず難治性である。 従来、日本人には少ないとされてきたが、潜在的患者は多いのではないかということが明らかになりつつある。 複数の異なる要因が関与し、膀胱粘膜の透過性亢進、アレルギー性の炎症等を来たすと考えられているが、詳細は未だ不明である。 
 
根本的な治療はないが、水圧治療、膀胱内薬物注入 治療等が奏効する場合もある。いずれにしても専門医の診断が必要である。
 
放射線性膀胱炎 過去に骨盤内悪性腫瘍(膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、子宮癌等)に対し、放射線治療を行い、治療後数年?10年以後に出血を伴う難治性膀胱炎のことをいう。
通常の細菌性膀胱炎とは異なり、放射線治療に伴う膀胱粘膜網細血管の脆弱化による出血、及び膀胱壁の伸展障害による頻尿が主症状である。 過去に放 射線治療の既往がある場合、その晩期合併症として放射線性出血性膀胱炎があり、一般的には一過性のこともあるが難治症例も存在し専門医の診察が必要であ る。
 

●尿失禁と神経因性膀胱
尿失禁とは意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態で、日本では約600万人の方が罹患していると報告されています。特に40歳以上の女性では3人に1人が悩んでいると言われています。これは尿道が太くて短いこと、また尿道括約筋のみで尿の漏れを防いでいるという女性の解剖学的特徴によるものです。
代表的な尿失禁としては、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁があります。
腹圧性尿失禁は、咳や運動などでおなかに力が入った時の尿漏れです。原因としては、骨盤底筋群のゆるみのため膀胱が下垂して尿が漏れる解剖学的尿失禁と、尿道のしまりが無いために尿が漏れる尿道括約筋不全があります。治療としては軽症の方には骨盤底筋体操(注1)をおすすめしています。これを上手に行うと約半数の人で尿失禁が治ります。骨盤底筋体操を3ヶ月行っても効果のない方には薬物療法を行います。スピロペント(β受容体刺激薬)は尿道括約筋に対する横紋筋緊張作用により尿漏れを防ぎます。メトリジン(α1受容体刺激薬)は尿道括約筋に対して収縮増強作用を有します。これらのお薬による治療で効果の見られない場合や重症例には手術療法を行います。代表的な手術療法には、コラーゲンを膀胱出口部の尿道粘膜下に注入して尿道の抵抗を高めるコラーゲン注入療法(図1)と、テープで尿道中部を支えることで膀胱の下垂を治すTVT(Tension-free Vaginal Tape)法(図2)があります。

【図1】コラーゲン注入療法 【図2】TVT法

切迫性尿失禁は、膀胱が勝手に収縮するためにトイレにたどり着く前に尿が漏れてしまう状態です。
原因としては脳梗塞や脊髄損傷などによる神経因性のものと、加齢や骨盤底筋の脆弱化、前立腺肥大症による下部尿路閉塞などに起因する非神経因性のものがあります。
治療としては骨盤底筋体操や膀胱訓練などの行動療法も行われますが、薬物療法が第一選択で膀胱の不随意の収縮を抑制するために抗コリン薬が主に使用されます。 その他、膀胱平滑筋に直接弛緩作用をもつカルシウム拮抗薬や三環系坑うつ薬なども使われます。 交通事故などによる脊髄損傷では、膀胱の伸展知覚を司る神経がAδ繊維からC繊維主体に変化するために膀胱の過反射が誘発されます。 そのためカプサイシンやレジニフェラトキシンを膀胱内に注入することによりC繊維を脱感作して膀胱容量の増加をはかる治療も行われています。 この様な治療によっても改善が見られない場合には、膀胱拡大術などの手術が行われます。
 
その他の尿失禁としては、溢流性尿失禁や機能性尿失禁があります。 溢流性尿失禁は、尿閉となった尿が溢れ出てくる状態の尿漏れです。 原因疾患としては、前立腺肥大症や低活動膀胱などがあります。 機能性尿失禁は、膀胱や尿道ではなく精神や身体の機能障害のためにトイレに間に合わない尿漏れで、高齢者の介護において大きな問題となっています。
 
(注1)骨盤底筋体操
骨盤底筋は尿道や肛門の周りにある筋肉で、膀胱や子宮などの骨盤内の臓器を下からハンモック状に支えています(図3)。 骨盤底筋がゆるむと膀胱が下垂して位置異常を来たすので、尿道括約筋が充分締まらなくなり尿失禁が起こります。 
 
骨盤底筋体操はこの弱った骨盤底筋を鍛える体操です。 いろいろな方法が有りますが代表的なのは椅子に座って行う方法です。 まず足を肩幅に開きます。 背筋を伸ばして顔を上げます。 息を吸い込みながら、肛門と膣を体の中に引き込むようにして5つ数えます。 はいリラックスして下さい。 骨盤底筋の上下の動きを意識しながら出来るかがポイントです。 この運動30回を1セットにして、1日につきに3セット行って下さい。 効果が出るのに少なくとも1ヶ月、平均3ヶ月ぐらいかかりますので根気良く続けてください。
 
●過活動膀胱(overactive bladder:OAB)
定義 病的におしっこが近い(頻尿)、おしっこの我慢がきかない(尿意切迫感)、おしっこが漏れる (尿失禁) ことで日常生活で困っている状態。膀胱がイライラして過敏になっている状態。
 
原因 神経の異常やその他の要因、原因不明も含めて多岐にわたる。
 
診断 過活動膀胱症状質問票(overactive bladder syndrome score:OABSS)
【質問票参照:http://www.hainyou.com/m/check/oabss.html 】を使用してスクリーニングや診断、重症度を検査します。OABSSにて1日の排尿回数が8回以上かつ、おしっこの我慢がきかないこと(尿意切迫感)が、週に1回以上ある状態は、過活動膀胱と診断されます。この診断は、過活動膀胱症状があるかどうかの診断ですので、その原因までは特定できていません。
そのため質問表で過活動膀胱症状があると診断された場合は、泌尿器科受診(※)をお勧めします。
 
※過活動膀胱の正確な診断には、局所的な病気の除外を行う必要があるため。
 
治療 治療は、膀胱がイライラしない生活を行うこと、膀胱のイライラを我慢できるようにすること、膀胱を柔らかくする薬を使うこと、膀胱の出口が閉まる薬を使うこと、外科的な治療を選択する方法があります。※具体的には、下記参照または、専門医と相談。

■行動療法
  • 生活改善
    • 体重減少、運動、禁煙、食事、飲水指導、便秘改善など
       
  • 膀胱訓練
    • なるべく尿を我慢することにより、症状を改善させる。
      12〜90%で治癒。75%で改善。副作用もないため第一選択となる。
       
  • 定時排尿
    • 膀胱容量がいっぱいにならない間隔で時間を決めて排尿する。
       
  • 排尿促進法
    • 周囲の人が排尿への動機づけをし、トイレ誘導させる。
       
  • 理学療法
    • 骨盤底筋訓練、フィードバック訓練、バイフィードバック訓練
       
  • 行動療法統合プログラム
    • 上記を併用して施行。
       
  • その他:鍼、催眠、蒸気温熱シートなど
 
■薬物療法
 抗コリン薬(内服、貼付材)、β3アドレナリン受容体作動薬、抗うつ薬、α遮断薬、
 5α還元酵素阻害薬、PDE5阻害薬、その他(フラボキサート、漢方など)
 ※保険適応外を含む
 
■神経変調療法、外科的治療法など
 
 


膀胱癌 膀胱の感染症 尿失禁 過活動膀胱

泌尿器科でよく見る病気 <INDEX>
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尿路結石 性感染症 ED



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